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遺伝子組み換え作物

Index

  1. 遺伝子組み換え技術の基礎知識
  2. 日本における遺伝子組み換え作物
  3. 遺伝子組み換え作物をめぐる国際情勢
  4. 遺伝子組み換え技術の利点/問題点
  5. 食糧問題と遺伝子組み換え作物

遺伝子組み換え技術の基礎知識

遺伝子組み換え作物を作る方法は、主に3つある。

がそれである。

パーティクルガン法とは、銃弾のように遺伝子をターゲットに撃ち込んで遺伝子を物理的に注入する方法で、金などの金属粉に導入したい遺伝子をまぶし、高圧ガスで植物細胞に撃ち込むものである。

アグロバクテリウム法とは、土壌中の細菌であるアグロバクテリウムの性質を活用し、導入したい遺伝子をアグロバクテリウムに組み込んで、そのアグロバクテリウムをターゲットとなる植物に感染させることによって遺伝子を注入する方法である。アグロバクテリウムは植物に感染すると自分のプラスミド DNA をその植物の DNA に組み込むという性質をもっている。

電気穿孔法は、ターゲットの植物細胞の細胞壁を酵素によって溶かし、プロトプラストの状態にして組み込みたい遺伝子と混ぜ合わせて高圧の電気パルスをかけるというものである。すると、ターゲットになる細胞の細胞膜に孔が空き、そこから DNA が細胞内に取り込まれることによって遺伝子組み換えが起こる。

パーティクルガン法だと植物細胞の細胞壁を取り除かず遺伝子が導入できるため、導入した細胞の生存率が上がるが、遺伝子がどこに組み込まれるか分からない。電気穿孔法は最近用いられることは少なくなっており、現在安全性が問題となっている遺伝子組み換え大豆はアグロバクテリウム法を用いて作られている。

代表的な遺伝子組み換え作物:

遺伝子組み換え作物の安全性については1980年代から OECD 加盟国を中心として実質的同等性というものが唱えられた。実質的同等性とは、ある作物に導入した遺伝子の特徴が詳しく分かっていて、遺伝子組み換え作物を原料とする食品が、遺伝子組み換えを行なっていない元の作物を原料とする食品と実質的に同程度に無害であると科学的に確信が持てる場合は、その遺伝子組み換え作物を原料とする食品の安全性は、元の食品と同等とみなされる、というものである。

日本における遺伝子組み換え作物

日本では大豆やトウモロコシ(生食用は国内産だが、飼料用はほとんどアメリカ産)などの穀物の多くを輸入に頼っているため、消費者が遺伝子組み換え作物を拒否したくてもできないという事情がある。日本で開発された遺伝子組み換え作物はまだ試験中で作付けはされていないが、農水省主導でウィルス耐性遺伝子を組み込んだイネの試験的な栽培や、サントリーによる青色の遺伝子を組み込んだカーネーションの栽培などが進行中である。

旧厚生省(現厚生労働省)の定める食品衛生法および農水省の定める JAS 法では、遺伝子組み換え作物表示の対象となる作物を大豆、トウモロコシ、ジャガイモ、ナタネ、綿の5種類を指定している。表示義務のあるのは直接口に入るものであり、またナタネと綿から採れる油は最終的な産物から組み換え遺伝子の DNA や酵素が検出できないので表示義務から外れるので、事実上表示が義務づけられるのは大豆とトウモロコシだけである。

いずれの場合においても、農水省の「組換え DNA 技術応用食品及び添加物の安全性審査基準」によると、加工食品において、遺伝子組み換え対象となる作物が全原材料中重量で上位3品目で、かつ、食品中に占める重量が5%以上の場合のみ表示義務が発生するばかりか、この基準を満たさない場合は遺伝子組み換えをしていないと表示できる。

遺伝子組み換え作物をめぐる国際情勢

1995年 生物多様性条約第2回議定書
[インドシナ]
遺伝子組み換え作物の国際取引の規制の合意
1999年2月 生物多様性条約臨時締約国会議
[カタルへナ, コロンビア]
推進派の輸出国と慎重派の輸入国で意見が分かれ議定書不採択
2000年1月 生物多様性条約特別締約国会議
[モントリオール, カナダ]
輸入国が同意した場合に限り種子の輸出を認めることで合意
カタルへナ議定書採択

モンサント社やカルジーン社ををはじめとして組み換え作物の種子販売を手がける企業が多数あり、アメリカで栽培されている大豆・トウモロコシ・ナタネ・綿の16%が遺伝子組み換え作物となっていて、現在も拡大中である。

アメリカ産のそうした遺伝子組み換え作物を輸入することに EU など組み換え作物輸入国は慎重で、輸入に対して厳しい基準を求めるが、アメリカやアルゼンチン、カナダなど組み換え作物の輸出国はこれに反発する。日本でも組み換え作物の表示義務を検討した際、アメリカから強い圧力がかかった。

国連食糧農業機関 FAO と世界保健機関 WHO が事務局となり、国際的な食品の規格を定める国際食品企画委員会 CODEX が作られた。CODEX の中でも遺伝子組み換え食品の問題が検討されていたが、遺伝子組み換え作物の表示については輸出国と輸入国との間で平行線をたどり、最終的に各国がそれぞれ基準を設けるという方針に落ちついた。

遺伝子組み換え技術の利点/問題点

従来の育種と違い、遺伝子を操作することはまだ未知の部分が多く、これまで人類が経験したことのないアレルゲンを産み出したり、実験室外で予想外の毒性を発揮し生態系を撹乱する可能性がある。また、遺伝子組み換え作物が雑種化したり近縁種と交雑することによって、除草剤への耐性や抗生物質への耐性が周囲に広まることが確認されている。そして、遺伝子組み換え作物が広まると結局のところ害虫やウィルスにも耐性ができ、じきに効果がなくなるのでいたちごっこだという指摘もある。

1999年5月、米コーネル大学の研究者らが、Bt トウモロコシの花粉が付着したトウワタの葉を近縁種のオオカバマダラというチョウの幼虫に与えたところ、4日間で44%が死亡し、残りも発育不全になるとの発表をした。EU はこの報告を受け、ただちにアメリカの Bt トウモロコシの種子を EU 内で販売する許可を凍結した。これに対して自然界ではトウモロコシの花粉が飛散する時期とオオカバマダラの幼虫がトウワタの葉を食べる時期は一致していないし、そんなに大量に食べることも起こりえないのでこの実験をもって Bt 作物が即危険であると判断することは尚早であるとの反論が出ているが、Bt 作物を自然界に放して長期的に生態系への影響はないか、また本当に意図しない生物にまで害を及ぼす可能性はないのかはまだ分かっていない。

また、1998年8月にはイギリスのロウエット研究所の研究者が、マツユキソウの害虫抵抗性の蛋白質(レクチン)を作る遺伝子を組み込んだジャガイモをラットに食べさせたところ、内臓の成長阻害や免疫力の低下が見られたという発表を行なった。レクチンには殺虫効果があるだけで哺乳類には作用しないことが分かっており、レクチンそのものを組み込んだジャガイモを与えてもそのような現象は見られなかったため、遺伝子を組み込むことによってになんらかの有毒物質が発生しているのだと思われる。これは遺伝子組み換え作物の実質的同等性に関する疑問を呈した実験となっているが、この研究者が使ったレクチン遺伝子組み込みジャガイモは実際に市販されているものとは異なっていたため、もしそのようなジャガイモが栽培されても実際には安全性審査の段階で不合格となり、市場には流通しないので問題ないと反論されている。

デンマークの国立リソ研究所のグループでは、遺伝子組み換えで除草剤に耐性を持たせたナタネの近くにナタネ科の雑草を植え、これらの植物が自然交配して除草剤耐性を獲得した雑草が誕生することを1996年3月に発表した。遺伝子組み換え作物の推進派はそのようなことが起こっても実際除草剤に対する耐性を獲得した雑草が自然界で繁殖するとは考えにくいので、問題はないとしている。しかし、こういった交雑の危険性は認識されており、アメリカではトウモロコシや綿などの Bt 作物を栽培する際には非 Bt 作物と交配しないよう、また害虫が Bt 作物に耐性を持つのを遅らせるよう、非 Bt 作物を緩衝地として作付けすることが求められている。

食糧問題と遺伝子組み換え作物

そもそも遺伝子組み換え作物が導入された経緯には将来の人口爆発を支えるための切り札としてであったが、果たして遺伝子組み換え作物で食糧問題が解決するのだろうか? 単に南北問題の延長であって、先進国が途上国を支配するための方便にすぎないのではないか?

緑の革命への反省

昨今の世界情勢の中で多くの人、特に途上国の人たちが飢えに苦しんできた。この飢餓問題を解消するため、第2次大戦中より「緑の革命」がメキシコを皮切りに進展した。緑の革命とは、それまでと同じ耕地面積で高収量を上げるよう品種改良された作物を植え、劇的に食料生産高を上げたものである。

しかし緑の革命にはいくつか問題点があった。1つは、高収量を可能にするためにはふんだんな肥料と水が必要であり、これは大農地を持つ裕福な農家でないと導入できなかった点である。せっかく獲れた作物を輸出しても土地も持たないような小農は恩恵に与れなかった。また、投入する肥料は先進国から買い付けるため、できた農作物を輸出しても外貨が手許に残らない。結局のところ、増えた食糧は途上国から消え去り、肥料や農業用機械耕作機が持ち込まれ、土着の農業の破壊と先進工業国への依存が深まるだけであった。

緑の革命によって、次のような作物の生産だけが重視されるようになった。

  1. 炭水化物の含有率が高い多収穫品種
  2. 多量の肥料を必要とし、化学薬品によってのみ病虫害予防ができる作物
  3. こうした植物を育成できるような環境でのみ作れる作物

遺伝子組み換え作物はこれに対する改善作として産み出された。

  1. 蛋白質の含有率が高い多収穫品種
  2. 有機的な農法による収量の増加と病虫害予防ができる作物
  3. 水利など環境が悪い土地でも作れる作物

だが果たしてこれは緑の革命への反省を踏まえたものであっただろうか?

References:

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小町守 (奈良先端科学技術大学院大学), mamoru dot komachi at gmail dot
com
Mamoru KOMACHI (Nara Institute of Science and Technology)
Last modified: ÆüÍËÆü, 01-10-2006 03:44:55 JST