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奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科紹介

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文科系だか理科系だか分かりませんが、科学史科学哲学分科を卒業してから、奈良先端科学技術大学院大学(略称 NAIST、奈良先端大とも)の情報科学研究科に来ました。

奈良先端科学技術大学院大学は、日本における2つ目の大学院大学(学部課程を持たない大学)として1991年に開学されました。2005年現在14年の伝統があることになります。ちなみに現在国立の大学院大学は NAIST に加えて北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)、政策研究大学院大学、総合研究大学院大学の4大学があります。

NAIST は情報科学研究科・バイオサイエンス研究科・物質創成科学科の3つからなり、情報科学研究科およびバイオサイエンス研究科は2002年の 21世紀 COE プログラムに採択されているように、全体として高度な科学技術の研究機関として機能しており、一般的な知名度は非常に低い(たぶん日本人の1%以下しか知らないんじゃないでしょうか)ですが、研究水準は評価されているようです。

もともとこの大学を選んだのは文科系出身なので数学や物理の試験があると絶対無理、と思ったので、計算言語学ができるところで試験に難しい数学がないところ、そして入学したあとも文科系出身者に対するフォローがしっかりしているところ、という基準で選んだのですが、入ってみて選択は正解だった、と強く思います。

入学試験

まず初めに入学選抜ですが、入学試験は面接だけで筆記試験はありません。面接には数学と英語および入学希望講座の教官(方)との面接の2つがあります。

数学と英語の面接は、まずある部屋に案内されて一人で数学と英語の問題を何分間か見て(20分だったかな?)、次に採点者がいる別の部屋に行って数学と英語の問題を順に説明する、といったものです。

数学は3行3列の行列の計算とか log の積分とか、基本的に高校レベル(せいぜい大学1年レベル)のもので、さらに3題くらいから2題選択してホワイトボードを使って解いていくだけなので、文科系出身の人でも高校の数学の教科書を全部復習すれば解けるもので、あまり気にすることはないでしょう。数学の問題は別室には持って行けないので、問題を見ていい間は解答の方針はしっかり立てておきましょう。ただし値は憶えていなくても、また計算間違いしても「そこ値違うんじゃないの」などと教えてもらえるので、注意点としてはパニックにならないことくらいです。

一方英語は5行くらいの英文(情報系の技術文)を1文ずつ試験官の前で実際に声を出して読んで訳す、といったものです。読んだ直後に考えながら訳すというのはなかなか難しいのですが、単語自体は分からなければ分からないでいい(単語力もチェックしているだろうけどしっかり構文が取れるかどうかの方が問題で、構文的には高校1、2年レベルのものしか出ない)ので、そこまで神経質になることはありません。レベルに達しない人を落とすための試験というよりは、大学院で研究をするに当たって必要になる基礎知識がない人に足りない部分を気づいてもらうための時間、というような感じです。構文取る能力はあるのに訳語の選択がちょっと、と言われた人もいるようなので、数学も英語も入試で言われたことはしっかり意識して改善していきましょう。

ちなみに NAIST は年3回(7月、9月、3月)入試がありますが、7月が倍率も約2倍と一番低く、寮にも入りやすいので、NAIST を受験しようと思っている人は、7月の受験を強くお薦めします。学生のほとんどが寮に入りますし、寮に入れないとかなり生活が大変になる(研究室に寝泊まりするようになったり……50mと離れていない寮に帰らずに研究室に寝泊まりする人のほうが多かったりしますが ;-p)ので、6月中旬くらいまでに志望先研究室の教官とコンタクトを取って、どの講座にするか決めておきましょう。また、6月上旬のオープンキャンパスでふらっと来てもいいですし、メールなどで連絡して直接研究室見学に来てもいいですが、(少なくとも1〜2年毎日のように過ごす)研究室の雰囲気と NAIST の利便性というか不便性は確認しておくことをお薦めします。

入試についてはNAIST-IS 入試 FAQ(NAIST 公式の FAQ)を見ておくとよいでしょう実際の問題などは奈良先端科学技術大学院大学受験メモも参考になります。

あと服装ですが自分は普段大学に行っている服装で行って問題ありませんでしたし、7月入試を考えている人は暑いのでわざわざスーツを着る必要はないでしょう。また、合格にせよ不合格にせよ院試の成績の開示を受けることができるので、気になる人は学生課に申請すれば成績が分かります。

教育システム

次に教育システムですが、ここは学部を持たないせいか大学院で専門を変える人を強く意識したカリキュラムになっていて、情報科学研究科の授業はどれも前提知識を持っていない人を対象に組んであって、非常にコンパクトに基礎知識を学ぶことができるようになっています。学期は4期制(4月5月がI期、6月7月がII期、10月11月がIII期、12月-2月がIV期)で、基本的に1講座週2コマで1期間取ると2単位、というようになっていて、学んでいない領域をピンポイントで速習して終えることができます。

授業の形式は毎週の講義に加えて1期間中に3〜7回の課題(つまり毎時間出るか毎週出るか)と試験といった形が主流です。

講義は基本的(95%以上)に PowerPoint 等のプレゼンテーションツールを用いたプレゼン形式で、資料もほぼ100%印刷可能(ダウンロード不可の場合は資料を授業中に配布する)なので、授業の前に各自印刷して授業に来る、といったように行われ、かなり親切になっています。文科系の授業では黒板(ホワイトボード)によく読めない文字でちょびっと書いておしまい、という授業がほとんどだったので、これは革命的でした。

また、課題はそれほど難しい問題が出るわけではなく、頻繁なけで20分くらいでできるものが多く、それで成績評価するというよりは、理解度の確認と講義内容の定着が目的なので、むしろ教育の一環として組み込まれているものです。しっかり課題をこなしていけば試験もあわてることなく準備でき、毎回課題で手を動かすことで脳にも定着する、といったふうに非常に効率的な学習ができます。

最後に、研究室の中でのバックアップ体制について述べます。NAIST は企業や外部研究所との連携がとても盛んなので、配属先として連携講座(たとえば NTT 基礎研究所とか通信情報研究所(ATR)とか)を希望することもできますが、その場合も1年目は基幹講座として NAIST のどこかの講座を選択し、そこで輪読や勉強会に出るなど勉強をすることになります。

研究室での勉強会は多岐にわたり、教員やドクターの人が出て最新の研究動向を紹介するような高度なものもあれば、ドクターやマスターの人が研究の進捗報告をするのもありますが、特に博士課程前期(修士課程)の最初、つまり M1 向けに基礎知識をつけるための勉強会(教科書の輪読や演習)やチュートリアル(ドクターの人が講義形式で解説してくれる)が用意されていることが多いです。

たとえば自然言語処理学講座では、M1 向けには4月のうちに機械学習についてのチュートリアルがあり、また M1 の間はドクターレクチャーといって言語学に関する基礎知識をドクターの人たちが毎週チュートリアル形式で教えてくれる、といったものがありますし、M1 が中心となる勉強会としては統計的計算言語学の教科書(英語)を輪読するものと、計算言語学で必要となる数学の基礎として離散数学の教科書を練習問題も含めて1冊やる、といったものがあります。

このように、授業に加えて勉強会でもサポートがあるので、大学院から新しいことを始めようと思っている人、もしくは学部でも一応勉強したけどしっかりしたレベルではなかったので心配な人、といった人には、NAIST の勉強環境は最適であるといえるでしょう。

欠点

ここまで NAIST の長所を述べてきましたが、短所もいくつかあります。全体的に伝聞なので適宜割り引いてください。

まず第一に、学部と全く同じことを続けたいと思っている人には不向きです。研究室が変わっているのですから、前の研究室で使っていたものが使えない、といったこともあるでしょうし、新しい環境に慣れるにも時間がかかります。また、NAIST は授業の単位をかなりの数取らないといけない上、課題もけっこう出るので、単位を揃えるのがたいへんです。特に研究したいことがはっきりしている人にとっては、M1 で単位を取るために授業で拘束されるのは苦痛であるとみんな口を揃えて言うので、いま学部生でそのまま上の大学院に上がれる人はしっかり考えてから来たほうがよいです。

次に、大学の知名度の低さです。情報系など特定の分野の人は名前も知られていることが多いですが、基本的に1000人に1人も存在を知らない大学であるということは考えた方がいいかもしれません。元いた大学の先生方など何人かに相談したことがあるのですが、全員研究者になるなら東大か京大以外はやめておけ(そもそも駒場ですら研究者になるつもりなら本郷に行きなさいと言われたことも)、と忠告されたので、最初から修士までで就職するつもりでないのであれば、他の可能性を当たった方がよいのかもしれません。自分が実際研究者になろうとしてまだ苦労しているわけではないので分かりませんが。NAIST は一般企業への就職(研究職)はかなりいいらしいので、修士で出るつもりであれば問題ないのではないかと思います。

最後に、授業や勉強会など忙しいことについてです。M1の前半で単位を揃えようとすると、夏休みまでは毎日朝の9時から夜7時まで勉強することになるなど、ものすごい過密スケジュールになります。それ以外に授業の課題をしたり(常時週3つくらい課題がある状態なので)、勉強会の論文紹介や輪読の準備をしたりと、かなり忙しい学生生活になります。上にも書きましたが、自分の研究がしたいのに時間がない、とか、アルバイトをしたいが時間がない(そもそも場所が場所なので、研究室の仕事以外のアルバイトも数えるほどしかありませんが)、といったことになるので、その点は注意しておいたほうがよいよいでしょう。

まとめ

まとめると、

となります。NAIST 進学希望の人の健闘を祈っています。

※入試に関する記述は2004年の第1回入試、教育システムに関する記述は2005年度のものが対象で、今後変更される可能性があるので参考程度に考えてください。質問やコメントなどありましたら mamoru-k -at- naist.jp までメールください。

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小町守 (奈良先端科学技術大学院大学), mamoru dot komachi at gmail dot
com
Mamoru KOMACHI (Nara Institute of Science and Technology)
Last modified: ·îÍËÆü, 26- 5-2008 07:53:57 JST